最近よく耳にするようになった言葉のひとつ「自己肯定感」について、正しく理解できていますか?
「そもそも自己肯定感って何?」
「自己肯定感が低いとどうなるの?」
「努力で高めることはできるの?」
と思っている方は意外と多いのはないでしょうか。
「自己肯定感」とは、自分は愛され、価値がある大切な存在で、いいところもダメなところも「ありのままの自分でいい」と認める感情や感覚のことです。
「自己肯定感」が高いと、感情が安定していて、さまざまな出来事をポジティブにとらえることができ、逆に、低いと「自分がダメなんだ」という感覚に陥り、ネガティブになりがちです。
「自己肯定感」は成長過程で育まれるもので、普段子育てに関わるママやパパ、まわりの大人たちの言動が大きく影響します。
たとえば、他のママやパパに子どものことを褒められても、謙遜して「いえいえ、うちの子なんて・・・」と、子どもの前で言っていたりしませんか?
もしも、このようなことがあれば、残念ながら子どもの「自己肯定感」を下げてしまっています。
この問いに、私は子どもというよりも自分自身が褒められても謙遜してしまっていることが多いなと実感しました。そして、あまりにも普通に謙遜していることが多いので、無意識のうちに娘を褒められても謙遜してしまっている=自己肯定感を下げてしまっていることはないだろうか、と少し不安になってしまいました。
「自己肯定感」は、子どもの心や行動、生きる力に影響するものなので、しっかりと高めてあげたいですよね。
そこで、この記事では、
- 「自己肯定感」とは何か
- 「自己肯定感」の子どもへの影響
- 「自己肯定感」が低くなる原因
- 「自己肯定感」を高めるポイント
を、具体例を交えながら、わかりやすく紹介します。
この記事を読んだ後は、子どもへの「自己肯定感」を高める働きかけを意識できるようになり、さらに、ママやパパ自身も「自己肯定感」を高めることもできるようになりますよ。
私自身も、まずは自分が褒められたら素直に受けとめられるようになりました。そして、娘のことを褒められたら、娘と一緒にうれしいという気持ちを共有しています!
1.「自己肯定感」とは自分の価値や存在を肯定できる感情
「自己肯定感」とは、長所だけでなく短所も含めて「ありのままの自分」を認めることができ、自分は大切な存在だと思える感情や感覚のことです。
「自己肯定感」が育まれると、
- さまざまな出来事をポジティブにとらえられる
- チャレンジして学ぶことができる
- 壁にぶつかっても乗り越えられる
- 相手の気持ちや立場を思いやれる
などのようなことがができるようになります。
反対に「自己肯定感」が低いと、自分に自信が持てずに、
- 一度失敗をしてしまうと二度と挑戦しなくなる
- 褒められてもゆがんだ考えもってしまう
- 応援されると負担に感じる
など、ネガティブになりがちで、チャレンジすることや積極性がなくなります。
つまり、「自己肯定感」とは、自分らしく生きるために必要な力、よりよい人生を送るための強い心だともいえます。
2.「自己肯定感」が低い子どもの3つの特徴
「自己肯定感」について理解できたとところで、実際、我が子の「自己肯定感」が高いのか低いのか、よくわからないという方もいるのではないでしょうか。
ここでは、「自己肯定感」が低い子どもの特徴をわかりやすいように、「自己肯定感」の高い子どもの例とあわせて紹介しますので、日常のなかで、あてはまることがないかの目安にしてみてくださいね。
チャレンジすることを嫌がる
「自己肯定感」が高いとチャレンジ精神が旺盛なので、なんでも自分から挑戦してみます。
しかし、「自己肯定感」が低いと、チャレンジする前から「自分にはできない」と考えてしまい新しいことにチャレンジしません。ママやパパが「やってみる?」といっても拒否することが多くあります。
ただ、ここは子どもの性格によって冷静にみたいところでもあります。
例えば、私の娘は人見知りが強く知らない子がいると馴染めるまでできないけど、誰もいなければ積極的に新しいことに意欲的にチャレンジしたがります。このように何でも嫌がるのか、環境次第なのかを考慮する必要があります。
褒められてもよろこばない
「自己肯定感」の高い子どもは、褒められるとよろこび、素直に「ありがとう」といいますが、低い子どもは、素直に受けることができず、本気で褒めてもらえてないと捉えたり、「ほめられるようなことはしていない」という態度をとります。
怒られると自分を責め極端に落ち込む
「自己肯定感」の高い子どもは、怒られたときは「次はがんばろう」と自分でモチベーションを高めることができますが、低い子どもは怒られると自分を責め徹底的に落ち込ます。
子どもによっては、話さなくなったり、黙って部屋を出て行ってしまうこともあり、さらに「自分はダメな人間なんだ」と思い込んで、行動力も無くなります。
3.「自己肯定感」が低くなる3つの原因
「自己肯定感」を育むために、まずは低くなる原因を知っておきましょう。
なぜなら、ママやパパなども、「自己肯定感」を下げようとしているわけではなく、無意識のうちにやっているということがあるかもしれないからです。知らず知らずのうちに使って「自己肯定感」を下げているかもしれない言葉の一例も交えながら具体的に紹介していきますね。
間違いを指摘して正解を教える
正しいことに導いているつもりでも、知らないうちに子ども否定していることにつながり、自己固定感が育つのを阻止してしまっていることがあります。
これは、まじめなママやパパや、高学歴なママやパパであるほど、その傾向にあり、子どもの話に正論で返した結果、そのようになることが多いのです。
私もマジメなので、思わず正しいことをいいたくなる気持ちは、ものすご~くわかります。でも、そこはグッと飲み込みます。なぜなら、子どもは失敗も含めて、すべて学んでいるのです。
大切なのは、子どもが「やりたい!」と思う心=「自己肯定感」を育てることです。
また、なんでもママやパパが決めてしまうと、子どもは自分で決められなくなってしまいます。さらに、自分の意見は尊重されないと思い「自己肯定感」を下げてしまうことにもなります。
こんな言葉いってない?
- 「そうじゃなくて、こうでしょう?」
- 「それは違うよ」
- 「違う、違う!」
- 「そっちじゃなくて、こっちが正解」
- 「こっちの方がいいよ」
- 「こっちにして」
- 「なんでそうなっちゃうかな~」
- 「いうことを聞かないと後悔するよ」
結果でしか判断しない
子どもが「やりたい!」という気持ちで取り組んだことには結果は求めないようにします。
挑戦した気持ちや姿勢などのがんばったことをほめず、結果だけで判断することで子どもは「できなかった」「自分はダメなんだ」と自信をなくしてしまったり、傷ついたりして、「自己肯定感」を下げてしまいます。
こんな言葉いってない?
- 「できないとカッコ悪いよ」
- 「もう少し上手に書こうね」
- 「どうしてできないのかな?」
- 「あ~、こぼしゃちゃった」
- 「こんに散らかして!」
- 「こんな色じゃないでしょ」
- 「ここは、こうでしょ」
必要以上に厳しくしつける
がんばってチャレンジする人になってほしいといった思いから、必要以上に厳しいしつけになってしまう場合があります。
例えば、
- 年齢にみあわない勉強を強要する(自分からやりたいといった場合は別)
- 約束を守らないと口を利かない
- 食事を残したら次はおかずを与えない
などは、このようなことは、しつけではありません。親のいうことを聞ける子どもにしてるだけです。
そして、無条件の愛情を注がれるべき親から、必要以上に厳しいしつけをされると
- 自分は大切な存在ではない
- 生きている価値がない
といった感情が芽生え「自己肯定感」を下げてしまいます。
こんな言葉いってない?
- 「走らないで」
- 「ありがとうは?」
- 「こぼさないで食べなさい」
- 「あ~、だから言ったでしょ」
- 「いう事を聞かないと失敗するよ」
- 「何度いったらわかるの」
- 「早くしなさい」
- 「ちゃんとしなさい」
- 「勉強しなさい」
もちろん、子どものためには、しっかりと叱らなくてはいけないこともあります。ただし、厳しさのなかには、親としての愛情や思いやりがなければいけません。
4.「自己肯定感」が与える子どもへの影響
実際「自己肯定感」の差が、子どもにどのような影響を与えるのかみていきましょう。
「自己肯定感」が低いまま大人になると、常に「自分は間違っているんじゃないか」と思ってしまい
- 独自の意見や考えがもてなくなる
- 新しいチャレンジができない
- 壁にぶつかってへこたれる
- 周りの人とうまくコミュニケーションがとれない
などの苦しい状況になることがあります。
反対に「自己肯定感」を育まれ成長すると
- 新しいことにチャレンジする勇気がもてる
- 壁にぶつかったとおきに乗り越えていける
- 相手の気持ちや立場を認められる
と、精神的に安定し、強い心で生きていく力がつきます。
新しい習い事へのチャレンジや、新しい環境でみんなと仲よくする、自主的に準備や掃除などをするなど、常に新しいことを前向きにとらえて、そこで学ぶことができるようになります。
また、新しいことをはじめると、思ったようにできないことがあったり、友だちからイジワルされたり、先生に怒られることもあるかもしれません。それでもその壁を「私だからできる!大丈夫!」と乗り越えられる力がわいてきます。
さらに、友だちなど自分以外の人の立場を想像して、違う意見も柔軟に認める力がつきます。
そのためには、普段から自分の主張が認められていると思えることが大切です。これは、小さいうちには難しいこともでもありますが、日々の積み重ねが育てるものであります。日常のこととして、長い目で育んであげたいですね。
5.「自己肯定感」を育てる7つのポイント
「自己肯定感」を育てる大切さや、低くなる原因などがわかったところで、具体的にどうしたらよいか7つのポイントを紹介します。
(1)比較をしない
お友だちはもちろん、兄弟や姉妹であっても、ほかの子と比較することは絶対にしないように注意しましょう。
ほかの子と比較する=子どもを否定しているということいなってしまいます。
子どもは敏感に感じ取って、自分に自信がもてなくなり「自分はダメなんだ」「どうせできない」と、新たなチャレンジすることもコワくなってしまいます。
そもそも人ぞれぞれスピードも考え方も違っていいのです。それが個性ですから、比べる必要がありません。いつでも「自分だからできる!」そう思える心を育てましょう
(2)子どもの話をきく
子どもはママやパパに話を聞いてもらうと、自分に関心を持っている、受け入れられていると感じてうれしくなります。
ママもパパも忙しい時間を過ごしていると思いますが、1日のなかで少しでもしっかりと子どもの話を聞く時間をもつようにしましょう。
話を聞くときのポイントとしては、ひたすら「うん、うん」「それで」と相づちをうって最後まで聞きます。途中で先回りして発言しないようにします。そうすると話がふくらみ、子どもも満足がいくまで話しきることができます。
それがたとえば、「今日のお昼ごはんがね・・・」と話したところで「おいしかた?」「全部食べた」などと先走って話を遮ると、子どもは、それに対しての返事をすることになり、本当に話したかったことが言えてないかもしれません。
(3)感情的に叱らない
その場面だけ切りとって、大人の判断だけで頭ごなしに叱らないようにします。
たとえば、いつも子どもの話を冷静に聞いているママやパパでも、外出したときに騒いでしまってつい怒ってしまったということもあると思います。周囲に迷惑をかけてしまうため、早くやめさせようとする気持ちがあるので仕方ないことですが、子どもを叱る前にママやパパが「騒いですみません」と謝るようにします。
そのうえで、たとえばお店で走り回ってしまったら「走るのって楽しいよね。でも、ここはお店でお買い物する場所だから、人にぶつかったりモノにぶつかってケガをしたら危ないから走らないようにしようね」と、一旦、受け止めたうえで、どうしたらいいのかを伝えます。
子どもは、親があやまる姿をみて「あやまらせるような事をしてしまった」と心に残り、さらに、どうしたらよいかということまでを学びます。
また、走りまわったことだけに着目せず、その理由を聞いてみるものよいですね。子どもの行動には必ず理由がありますし、ママやパパもそれを知るきっかけになり対策などにもつながります。
つい感情的に怒ってしまったら
ママもパパも人間です。その時の体調や時間の余裕のなさなどから、とっさにイライラと怒鳴ってしまうこともあります。
そんな時には「さっきは、ママはイライラして大きな声で怒っちゃった。大きな声を出してゴメンね。ママは騒がれたのがイヤだったの。でも、あの後に静かにしてくれて、ママは助かったよ」と素直に伝えます。
ママがきちんと気持ちを伝えたことで子どもは
- ママが自分の気持ちを教えてくれた
- なぜ怒られたのか知る
- 騒いでいけない
- イライラすると怒ることがある
ということが理解できるようになります。
これは、「イヤイヤ期はいつまで?対処のポインは2つ!年齢ごとの対応&具体例7選」の第6章『イライラとっさに怒ってしまったときのフォロー&しかり方』と同じですね。詳しく知りたい方はあわせて読んでみてください。
(4)やり抜く体験と達成感をあじわわせる
小さなことでも「できた!」という経験が自信へとつながります。この経験の積み重ねが、失敗しても挑戦できる力となりますので、たくさんの小さな成功をさせてあげましょう。
ただし、無理やりさせるではなく、あくまでも子どもが「やりたい」と思うことが大切です。また、目標が高すぎるとプレッシャーを感じてしまいます。
もしも、失敗したりうまくいかないことで落ち込んだり悩んだりしていたら、その気持ちにより添い「〇〇よね」「でもね、〇〇ならできるようになるよ」「きっと大丈夫よ」「なんとかなるよ」と、そのときの子どもの様子や性格にあわせて楽観的になれるような声をかけてあげると、やり抜く力が湧いてきます。
(5)無条件の愛情を注ぐ
『非認知能力』でも同じことをお伝えしていますが、やはり、ママとパパからの無条件の愛情は偉大です。
どんな自分でも「愛してくれる人がいる」という信頼感から「自分は愛される存在なんだ」という自分への信頼感が育まれます。これが土台となり、ほかの人を信頼したり、認める力がつきます。
「自己肯定感」と同様に重要視されている「非認知能力」については、「非認知能力とは?幼少期に育てたい理由・伸ばし方【かんたん解説】」でまとめていますので、あわせて読んでみてくださいね。
(6)子どもをまるごと認める
ママやパパ、まわりの大人みんなにも長所や短所があり、それは表裏一体です。それは子どもも同じですから、どちらも含めてまるごと認めてあげます。それが子どもの個性でもあります。
具体的には、短所を長所に置き換えてみるとわかりやすいです。
たとえば、
- 「人見知り」→「よく観察しているね」
- 「おとなしい」→「やさしい」
- 「そそっかしい」→「好奇心旺盛」
などのように、長所として言葉に出して認めます。
そのうえで、改善してほしいところがあれば「次は〇〇した方がもっといいよね」と伝えるようにします。
(7)いつでも明確にほめる
子どもがかいた絵をみて「上手にかけたね」とだけ言っていませんか?
褒めていることには変わりはありませんが、これは“上手に絵がかけた”という結果に対してジャッジしていることになりますので、残念ながら自己肯定感は育まれません。
「自己肯定感」を育むためには、取り組んだ姿勢やプロセスを明確にほめることです。
例えば、出来なかったことが出来るようになった場合なら、「たくさん練習をがんばったから、できるようになったんだね」とプロセスもほめてあげます。
また、
- 「ひとりで服を着られたね」
- 「靴をはけてすごいね」
- 「この絵はいろんな色をつかったんだね」
- 「昨日よりも早くできたね」
などと、「いつでも明確にほめる」ことが大切なポイントです。
6.本当のダメは2つだけ!命に関わることは、しっかり叱る
ここまで「自己肯定感」を育むことをお伝えしてきましたが、それは叱らないとうことではありません。全く叱らないのは間違いです。
最近では「ダメを使わない」、「叱らない子育て」などについて、いといろといわれていますがここを誤って理解しないようにしたいところです。
普段はダメをなるべく使わないようにするというのは前提ですが、叱るべきポイントは”命に関わるかどうか”ということです。
命に関わることは「ダメ!」「やめなさい!」としっかりとしかりましょう。
本当のダメはたった以下の2つだけです。
- 子どもの命・心を傷つけること
- 相手の命・心を傷つけること
いざというときに、普段は使わない「ダメ!やめなさい!」と叱られたら、おどろいて止まります。そして、いつもとは違うママとパパに子どもも気づくことができます。
反対に常に「それはダメ」「やめて」といい続けていると、とっさの叱りも効果はありません。なぜなら、いつも言われている言葉だからです。
普段は、一旦、受けとめてから改善してほしいことを伝えことを心がけ、命に関わることには間髪入れず「ダメ!」「やめないさい」です。
たとえば、
- 道路に飛び出す
- お友だちを道路につき出そうとしている
- 道路に向かって石を投げている
- 突き落そうとしている
などなど。
叱るポイントはメリハリと、親としての愛情持つことで、きちんとしつけをするのも親の大切な役目です。全く叱らないというのは違いますよ。
さいごに
子どもが小さいうちは一緒に過ごすのがあたりまえでも、いつかはママやパパから自立します。そのときに、ポジティブに生きていける力をつけてあげる。「自己肯定感」を育むというのは、まさにそんなことだと思います。
そのために、子どものいいところも、そうじゃないところも丸ごと認めて、どんなときにでも「わたしだから大丈夫!」「ぼくだから大丈夫!」「わたしはわたしが好き」「ぼくはほくが好き」そんな風に思える前向きで強い心に育つよう、ポジティブな言葉がけをしていきたいですね。
それは、けっして難しいことではないことを理解いただけたと思います。
そして、子どもの自己肯定感をあげるためには、ママとパパ自身も自己肯定感をあげることも、大切ですよ。今日から、ぜひ、意識してみてくださいね。