最近、「STEAM教育」という言葉をよく目にするようになったけど一体何?どんな教育なの?イマイチわからないと思いますよね。
「STEAM教育」は、AI時代に対応する力を育成するために理系や文系の枠を超えて学び、課題を見つける力や解決する力、新しい価値を創造する力をはぐくむ教育方針です。2000年代からアメリカで始まり世界的に注目され導入が進み、オバマ元大統領の演説で有名になりました。日本では2020年度の小中学校でのプログラミング授業の必修化を皮切りに、さまざまと推進されてきています。
この記事では、
- 「STEAM教育」とはどんな教育なのか
- よく似た用語「STEM教育」との違い
- 幼児で「STEAM教育」をはじめるメリット
- 家庭での取り入れられる「STEAM教育」
などについて、初めてでも簡単にわかりやすく解説していきます。
この記事を読んでいただければ、STEAM教育の基本的なことを理解いただけます。ぜひ参考にしてみてくださいね。
目次
1.STEAM教育とは5科目の頭文字を組み合わせた横断的な教育方針
「STEAM教育」では、理系や文系などの枠を飛び越えた横断的な学習を行います。子どもたちがAIやIotなどの急速な技術の発展により社会が激しく変化していく中で順応性があり解決する力のある人材を育てることを目的にしています。
科学、技術分野での「新しい創造や革新を起こすことのできる人材」、政治、経済、科学技術など「多様な問題や課題の発見、解決、社会的な価値を創りあげていく力」などを育んでいきます。
「STEAM」は「スティーム」と読み、5つの学問領域の頭文字からなる造語です。
<STEAM教育5科目>
S:Science(サイエンス)/科学
T:Technology(テクノロジー)/技術
E:Engineering(エンジニアリング)/工学・ものづくり
A:Art(アート)/芸術・文化・生活・経済・法律・倫理・教養など
M:Mathematics(マスマティクス)/数学
それぞれの科目のどんな点に注目されているのか具体的にみていきましょう。
S:Science(サイエンス)/科学
「STEAM教育」の科学は、様々な物事に好奇心を持たせる役割があります。
植物や動物、人体などの身近なものから、元素、自然現象、宇宙など、様々な物事に好奇心を持ち研究活動を通じて、物理的思考の土台となる課題や法則に気づく力を育みます。
T:Technology(テクノロジー)/技術
「STEAM教育」の技術は、科学を役立てて実際にものを作ったり、プログラミング学習によって、論理的思考力や課題解決力を育みます。
AIやIotを使いこなし、ITに負けない発想力を伸ばします。また、将来のキャリアや選択肢を増やすことにもつながります。日本では2020年に小中学校でのプログラミング授業が必修となりました。
E:Engineering(エンジニアリング)/工学・ものづくり
「STEAM教育」の工学・ものづくりは、新製品や新技術の研究から空間的把握能力、生産性を育みます。
自分でプログラミングしたロボットを作ったり、図面から製作したりなど様々な教育が行われています。工業科のある高校では機械の設計や工作、自動車整備なども学びます。
A:Art(アート)/芸術・文化・政治・経済・リベラルアーツ・生活
「STEAM教育」のアートは、自由な発想力や想像力を育み、作品を生み出すことで創造力を育みます。
また芸術などのほか「リベラルアーツ(教養)」が含まれ、社会で生きていくうえでの根本的な考えや知識などを指します。社会の一員として生きていくためには、自分の考えやイメージを言語化し、表現・伝える力が必要になります。その力を鍛えるのです。
M:Mathematics(マスマティクス)/数学
「STEAM教育」の数学は呼応式などの法則にふれ、理論的思考力を養います。
数理的な考え方を学ぶことにより、様々な科目に役立てることができます。
2.「STEAM教育」と「STEM教育」との違いは1つ
「STEAM教育」とよく似ている「STEM(スチーム)教育」があります。その違いは一目瞭然「A=Art」が含まれているか否かです。
「STEM教育」は「STEAM教育」の前身の教育で、新しい創造や革新を起こすことのできる人材を育てるために始まった教育です。
科学知識や技術に加えてデザイン性がないとカタチとしてつくりあげることができません。自由で豊かな発想で独創的・造像的な考えと教養を育むために「Art」が加わり、「STEAM教育」へと進化したのです。
<STEAMS教育>
最近では、さらに「STEAMS教育」という言葉も見るようになってきました。「STEAMS教育」は、「STEAM」に「Sports(スポーツ、運動)」を付け加えた教育方針です。ひらめきや考える力だけでなく、それを実現するための協調性や体力をつけることを目的とされています。
3.幼児期の「STEAM教育」には3大メリットがある!
現時点(2022年10月時点)では、幼児期の「STEAM教育」導入は定められていませんが、実はたくさんのメリットがあります。
<幼児期に「STEAM教育」を導入するメリット>
- 幼少期に育てたい「非認知能力」がつく
- 自己肯定感」が高くなる
- 考える力がつき小学校からの勉強が楽になる
まさに、幼児期は「STEAM教育」の思考の土台をつくる最適な時期なのです。
では具体的にどのようなことを行えばいいのでしょうか。
それはとても簡単なことで、毎日の遊びの中から学ぶことです。けっして、プログラミングやパソコンを習う必要はないのです。
たとえば、
- 工作
- 積み木
- 折り紙
- 砂遊び
- 料理のお手伝い
など、普段からやっている遊びや生活だけでも十分にできるのです。
ポイントは日常の中で『興味を持つ→試行錯誤しながら表現する→成功体験する』といった考えやプロセス、成功体験をすることです。それを繰り返すことで、自分で考えることが楽しくなり、好きなことを見つけてとり取り組んでいくという地頭ができているため、小学校に入ってからの勉強も楽になります。
「非認知能力」や「自己肯定感」について詳しく知りたい方は次の2つの記事もあわせて読んでみてください。
・非認知能力とは?幼少期に育てたい理由・伸ばし方【かんたん解説】
・自己肯定感とは?低いとどうなる?原因と影響、高めるポイント7つ
4.家庭で簡単に取り入れられる!「おうちSTEAM教育」
幼児期からの「STEAM教育」でも触れましたが、日常の中に「STEAM」の要素がたくさんあります。専用の教材などがなくとも身近なモノやことが「STEAM教育」へとつながるのです。
では、具体的にどんなことができるのか、ほんの一例ですが紹介します。
「おうちSTEAM教育」の3つのポイント
まず、家庭で「STEAM教育」を行ううえで意識したいポイントは次の3つです。
- 口や手を出さずに見守る
- 子どもの意見を尊重する
- 日常生活の中の「なぜ?」を大切にする
経験ある大人は子どもについつい手助けをしたくなるものです。しかし、ここは我慢。子どもの考えや意見、疑問のすべてを尊重し見守りましょう。(ただし、危険なものやことと感じることには、積極的にサポートしたりママやパパが代わりに行います)
失敗しても、そこから学ぶことはたくさんあります。しかも、そこから意外な角度で成功に結びついたり、新しい発見につながることさえあります。けっして正解を教えたり、理解をさせる必要はありません。
また、その場限りで終えず、日常生活の中にあるものから疑問や気づきにつなげる働きかけをしていきましょう。
「おうちSTEAM教育」の具体例8つ
次に具体的な例をほんの少し紹介していきます。
野菜やフルーツを研究する
野菜やフルーツを観察しながら「中身はどんな風になっていると思う?」と問いかけてみましょう。色やカタチ、種が入っているなど、子どもの自由な発想で発言してもらいます。(POINT:ここで間違っていても言い直しはしないこと)
一通り意見が出たら「じゃあ、切って確かめてみよう!どんな風に切りたい?」「ここを切ったら、どんなカタチが出てくるかな?」などなど、カタチや中身など外から見るだけではわからない仕組みや構造に関心を持たせます。
この他にも、インク切れしたボールペンやサインペンなど使わなくなった文房具なども同様によい教材になります。
磁石でくっつくもの探し
磁石で家の中で、くっつくモノとくっつかないモノ探しをします。
家具や家電、おもちゃなど、普段の生活の中で、どんなモノが磁石にくっつのか、子どもなりの発見がありオモシロイですよ。
(POINT:磁石をくっつけると壊れるものは先に伝えるようにします。それ以外は口出しせず見守りましょう)
トランプで数字で遊び
トランプの数字を「10」にしていく遊びなどもありますが、まずは「神経衰弱」や「ババ抜き」「七並べ」などママやパパがよく知っているもので楽しく遊びましょう。遊びながら数字に慣れていき、さらに短期記憶能力も養うことができます。
我が家の娘も4歳の時に「神経衰弱」に大ハマりしました!初めは手加減していましたが、回を重ねるごとに上達し、本気を出しても大人が負けてしまうのですから、子どもの記憶力と吸収力ってすごいなと思ったのを覚えています。
カタチ・模様探し遊び
〇や□、ギザギザ、シマシマ、水玉など、カタチや模様を探す遊びです。
おうちの中でも外でも気づいたときにできる手軽にできる遊びです。
積み木で遊び
積み木のパーツは立体的に作られているので、形や大きさ、奥ゆきなど三次元空間認識や、積んだり並べたりして組み合わせでカタチやアイディアを自由に生み出す創造力などが育まれます。
積み木の知育効果について詳しく知りたい方は、こちらの記事をあわせて読んでみてください。「こんなにある!積み木あそびの知育効果&選び方のポイントは3つだけ」
モノが落ちるスピード比べ
ここで用意するものは何でもいいのですが、例えば、ティッシュペーパーとボールを同じ高さから落とすと、どっちが速く落ちるかを比べます。
私も娘とも何度もやりましたが初めてやったときに「ティッシュとボールはどっちが速く床に着くかな?」と問いかけると「ティッシュ!」と迷わず答えていました。「どうして、そう思う?」と聞いたら「ふわふわしてるから」と答えたと思います。
よくわからない理由でしたが、そこは否定せず実際にやってみると「ボール!」と気づき、「ボールが先に落ちたのはどうして?」という問いにも重さの違いに気づくまで、だいぶ時間はかかった記憶がありますが、大人は考えなくてもわかることが子どもには発見になることを私も学びました。
ほかにも、調理ボールに水をはって種類の異なる野菜を入れて、沈むもの浮かぶものを観察するのもおすすめです。
お手伝いをする
お菓子や飲み物をみんなが同じ数や量になるように分けてもらいます。
人数分のお皿やコップを出して、そこに用意されたお菓子を分ける。飲み物も同じ量を注ぐ。これらは数などの概念につながります。
プチ料理をしてみる
ゼラチンを使ってジュースや液体を固めてゼリーを作る。トマトを茹でて冷たい水に浸けると簡単に皮がむける、そして、それをマリネしてみるなど、簡単な料理をしてみましょう。
なぜ固まるのか、どうして簡単に皮がむけるようになるのか、皮をむくとどんな効果があるなどなど。食材に触れるわくわく感と、変化する驚き、たくさんの「なぜ」が生まれます。さらにママやパパが食べて「おいしい!」と言ってもらえるよろこびなど、たくさんの要素を体験することができます。
こんな風に日常はたくさんの学びの場になります。常には難しくても時間に余裕のあるときには、ぜひ積極的に「なぜ?」「そうか!」「できた!!」の体験をたくさんさせてあげたいですね。
「おうちSTEAM教育」におすすめの本4選
特別な教材は不要な「おうちSTEAM教育」ですが、なかなかアイディアが思い浮かばないという方もいるでしょう。そんなママやパパにおすすめの本をご紹介します。
(1)ワクワク!かんたん!おうちSTEAM
本の約半分が付録のアクティビティシートとノートなのですぐ実践できます。事前準備がほとんどいらないので手軽ながら本格的に「STEAM教育」を実践でき、声の掛け方例なども参考になります。
(2)おうちでSTEAM教育 わくわく科学実験図鑑
全世界でベストセラーとなった実験図鑑です。工作編などシリーズの販売もされています。家庭にある身近なものを使った実験例がたくさん紹介されていてるので、夏休みの自由研究にもおすすめです。
(3)小学生からのわくわく!おうち実験室
小学校からと書かれていますが幼児からでも取り組める内容がたくさん紹介されています。こちらも身近にあるもので実験ができるので取り組みやすく、写真やイラストで手順などもわかりやすく掲載されていています。
(4)幼児期のさんすう体験×親子で楽しい!さんすうができる子になる遊びワーク
こちらは幼児期に数字に慣れる遊びの本です。小学生で苦手意識をもつ子が多いといわれている算数の土台作りをするための本です。日常生活や遊びの中で簡単に楽しく取り入れられる例が紹介されています。ワークで身に着くことやアレンジなども紹介されています。
さいごに
いかがでしたか?
子どもたちが大人になる頃は、今よりもさらにAIやロボットが広く社会進出しています。急速に変わっていく社会に対応する力と、AIやロボットを「使える」人材育成は必須であり、「STEAM教育」はその一翼を担うものといえます。
「なぜ?」という疑問や気づきなど、普段の生活や遊びの中で無理なく大切に育てていきたいですね。